「だけど、もう直ぐ七時半です。真央ちゃんが待ってると思うのですが」
娘の名前を持ち出されて戸惑う。
仕事中に子供のことを出したことがないからだ。
「あの子なら大丈夫。実家の父と母が面倒を見てくれてる」
言い訳をすると顔を曇らせる。
クールで表情を表に出さない彼女にしては珍しい。
「おじいちゃんやおばあちゃんは親じゃありませんよ」
険しい顔つきでそう言い、手伝わせて下さい、と言い放った。
少し怒った様な口調だった為か、部署の隅にいた男性陣が目を向ける。
それに気づいた横山も声を潜め、「なるべく早く帰って欲しいんです…」ともう一度願った。
何故かその顔が泣きだしそうに見えて、俺は根負け気味に残った書類を差し出した。
悪い…と言うと嬉しそうな顔に戻り、いいえ…と笑って逃げて行く。
今日の横山は表情が豊かだな…と不思議に思いながら仕事を再開した。
彼女の手伝いもあって、事務処理は七時半過ぎには終わった。
確認を求められた書面も見直して席を立つと、彼女も帰ろうとしているところだった。
「横山さん、ありがとう」
娘の名前を持ち出されて戸惑う。
仕事中に子供のことを出したことがないからだ。
「あの子なら大丈夫。実家の父と母が面倒を見てくれてる」
言い訳をすると顔を曇らせる。
クールで表情を表に出さない彼女にしては珍しい。
「おじいちゃんやおばあちゃんは親じゃありませんよ」
険しい顔つきでそう言い、手伝わせて下さい、と言い放った。
少し怒った様な口調だった為か、部署の隅にいた男性陣が目を向ける。
それに気づいた横山も声を潜め、「なるべく早く帰って欲しいんです…」ともう一度願った。
何故かその顔が泣きだしそうに見えて、俺は根負け気味に残った書類を差し出した。
悪い…と言うと嬉しそうな顔に戻り、いいえ…と笑って逃げて行く。
今日の横山は表情が豊かだな…と不思議に思いながら仕事を再開した。
彼女の手伝いもあって、事務処理は七時半過ぎには終わった。
確認を求められた書面も見直して席を立つと、彼女も帰ろうとしているところだった。
「横山さん、ありがとう」

