好きな人が現れても……

指輪もしてるし既婚者だから、見てるだけでいいと思ってたんだけど……」


まさか奥さんが亡くなってるなんて知らず、知ったあの日からいろいろと変わってった。

見てるだけでいい、から一人の女性として認めて貰いたい、になった……。



「どうしたの?紺野君…」


口元を手で隠したまま、紺野君は俯いてる。
何かを考えてるようで、私は彼のことを窺った。



「……いや、俺、マズったかも…」


そう言ったきり黙り込み、頭の中で何かを考え始める。
何がマズいのかも分からず、私はその様子を黙って見た。




「ーー横山」


ふと声を出した紺野君が私を見直し、一生懸命口元に笑みを浮かべる。
痛々しそうに見えた唇を眺め、それから目線を彼に合わせた。


「…俺、その片思いには賛成しない。横山はまだ若いんだし、子持ちの課長が好きだからって、そこまで惚れ込む必要もないと思う。

俺だってまだ完全に諦めたわけじゃないし、フラれたら引き受けてやるつもりでいるよ。

でも、横山の恋が叶うように陰で応援はする。
お前が課長のことを助けたいって思う気持ち、いつか届くといいなって思う。