好きな人が現れても……

課長の真央ちゃんへの言葉が蘇り、思わず泣きそうになる。
でも、紺野君の前でだけは泣いてはいけないと気を張り詰め、ぐっと涙を飲み込むように息を飲んだ。


「私……その後でいろいろと考えたの。最初は後悔ばかりで、どうして口に出してしまったんだろうって思った。
彼が亡くなった奥さんしか思ってないことも十分わかってたのに、どうして口をついて出てしまったのか…って。

家に帰ってからもずっとそのことばかりを考えて、無力で何もできない存在の私が、彼の役に立てる訳がない…って。

だけど、そのうち少し腹も立ってきて、亡くなった奥さんを思い続けてるだけで、あの人はホントに幸せなのかな…と思いだした。

迷惑だって言われるかもしれないし、頼んでないと思われるかもしれないけど、でもやっぱり自分が好きだって思う気持ちは止められない。

思ってる間は彼のことを助けたいし、子供さんの笑顔だって見たい。

奥さんの代わりにはなれないから、そこは早々に諦めてるんだけど、…でも、彼に認められたい。
自分のことを好きな女なんだと意識して貰いたい。