好きな人が現れても……

「……俺さ」


紺野君の声に胸の音を加速させながら耳を傾ける。
振り向いた彼の目が私を捉え、直ぐに頭を項垂れて謝った。


「ごめん!一昨日はどうかしてた!」


潔いところは変わってない。
ストレートな性格だった…と新人の頃を思い出した。


顔を上げた紺野君は私とは目を合わさずに続けた。


「俺、横山が思ってる男とくっ付くのが見たくなくてさ。
そんな子持ちの男なんかよりも俺の方を見て欲しいって気持ちが膨らんじゃって、横山がほろ酔い加減なのをいいことに自分の欲望をぶつけてしまったんだ。

男らしくなかったと思う。憎まれ口を叩いたことも申し訳ない。ごめん!悪かった!」

素直に謝ってる姿は好青年だ。
こんな風に謝られて、許さないということが出来るだろうか。


「……もういいよ。紺野君だけが悪い訳じゃないから」


壁に背中を凭れて息を出す。
はぁー…と吐いた息が出なくなってから言葉を付け足した。


「昨日…彼に告った。ずっと好きで見てました…って言ったら、凄く驚いたような顔された。
ムリもないのかなって思ったけど……」