横山葉月が逃げた後、ストン…と力の抜けたように座った。

あんな若い子にストレートに気持ちをぶつけられたのは久し振りだ。
亡くなった妻と結婚する前には、何度か同じ様な経験をしたが……。



真央の為にも前を向いて生きるべき……


横山の言葉は心臓に突き刺さった。
これまで母親にも何度も言われた言葉だったが、彼女ほど強く感じたりはしなかった。

親は親で亡くなった妻への思いがあるからだろう。
最後は自分で決めることだけど…と、強く勧めたりはしてこない。


だから、こっちもある程度のところまで聞いて流す。
真剣にそれを捉えようともせず、今日まで安穏としてきたのだ。



しかしーー


横山の言葉を思い出し、胸の奥がトン…と鳴る。

まさか、彼女が自分のことを好きだったなんて、それも知らずに助けを求めたのは失敗だった。

何かの期待をかけてしまっただろうか。
いや、あの日、真央に言った言葉で逆に彼女を傷付けたかもしれない。


自分では娘に聞き分けさせようと言った言葉だったが、横山はまるで自分が言われたように受け止めたかも。


……だが、それでも別にいいのだ。