愛娘を引き合いに出すなんて卑怯だ。
我ながらバカなことを言った。


でも、課長は怒りもしないで、そうだね…と反省する様な声を出した。

それを聞いたら堪らなくなって、閉めていた心のドアがキィ…と軋みながら開いた気がした。


「私……亡くなった奥さんを一筋に思う課長は素晴らしいと思います。いつまでもその人を思い続けて生きる男の人はカッコいいと思う。

ずっとそうして貰えるなんて奥さんが羨ましい。私も結婚した人がそうだったら、きっと嬉しいと思うんです。


……でも、側から見てると切ない。
課長が何処かムリをしてるのではと思えて仕方ありません。


私が課長の役に立てればいいのに…って。
無力なのに、そんな事ばかり思ってしまって……」


だけど、日曜日に軽く拒否されたようなものだ。
真央ちゃんと二人だけの家庭に引き入れられたのは、あの時のみだと言われたような感じだった。


「横山さんの気持ちは有難いよ。実際助けて貰ったし、感謝はしてるけど…」


「知ってます。課長の心に亡くなった奥さんしか見てないってこと。今回は特別に私に頼ってくれたんだってことも分かってます。
だけど、敢えて至らないことを言います。