「課長…」


何気なく声を出したら呼んでた。
課長はお茶を飲むのを止め、水筒を下げて振り返る。


「ん?」


その声に反応するかの様に振り向き、目の前にいる人を視界に入れた。


小さな女の子に似た垂れた目元。
小鼻が小さくて形のいい鼻。
穏やかな口調で怒ってても怒ってるようには聞こえない唇。

ワックスで簡単にまとめてる髪も、その隙間から見えてる耳朶もずっと見てきた。

体フェチか…と呆れるくらい、全部、全部が好きだーーー。


「課長は……これからもずっと、お一人様のままでいるんですか?」


口をついて出てきた言葉に自分が驚く。
何を聞いてるんだ…と思うけど、今更取り消せるようなことではない。


課長は私のことを見たまま少しの間無言だった。
その間に取り消せば良かったのだ。



「…そうだね。多分、一人でいると思う…」


取り消すまもなく返事が返る。

不確定な感じで言うけど、声の調子が強い。
そういう覚悟でいるのだと嫌でも身に詰まされる。


「そうですか。…だったら真央ちゃんは可哀想ですね…」