真央ちゃんに言ってる言葉なのに、まるで自分に言われてるようだ。

例え好きな人がも現れても再婚はしない。
亡くなった人以上に好きな人とも会いたくないーーー。



胸の奥に刻まれそうな言葉の強さに泣きそうになった。
泣いてはいけないと気を張り詰め、何とか堪えてその場に居た。


「…あ、そうだ。私、真央ちゃんにお菓子作って来ます」


居た堪れなくなって立ち上がり、キッチンの方へ向かった。
持ってきたペーパーバッグから取り出したのは、チョコレートとバナナ。


チョコを湯煎で溶かして、バナナスライスの上から掛けるだけ。
今は食べる気にならないだろうから、後からでもいいので…と声をかけておいた。




「私、失礼します」


使った食器を洗って乾燥機に入れた後、そう言ってエプロンを外した。
まだ真央ちゃんはショゲていて、その小さな肩を見ながら胸が切なくなった。



「今日はありがとう。真央が変なことを言ってすまなかった」


ドアを閉める前、課長はそう言って謝った。

私はいいえ…と首を横に振り、目を伏せたまま外へ出た。