引き合いに出されて胸が弾む。
知らん顔をしておくつもりでいたのに、思わず課長の顔を見てしまった。


「真央!」


流石に本気で怒ったらしい課長は、真央ちゃんのことを睨んだ。
真央ちゃんは口を噤み、助けて…と言う眼差しを私に送る。


「…か、課長、子供の言うことですから…」


穏便に…と声をかけると、課長は私に「すまない」と謝った。


「本当に躾がなってなくて」


「い、いえ」


真央ちゃんの気持ちは何となくだけど分かる。
パパだけじゃなくママも欲しいんだ、きっと。


「いいか、真央、よく聞いて」


真央ちゃんの向かい側に座ってた課長は側に来て膝を着いた。
目の高さを合わせると、彼女にゆっくりとした口調で話し始めた。


「おばあちゃんが日頃何かを言っても間に受けるな。
パパは例えどんなに好きな人が現れても再婚はしない。

一生を亡くなったママに捧げると神様に誓ったし、ママ以上に好きな人とも会いたくないんだ。
真央には寂しい思いをさせるかもしれない。だけど、パパには無理だから…」