「真央、お前はいいから少し黙って」


課長はメッ!と少し恐い顔をしてたけど、真央ちゃんはそれをちっとも恐がってない。
力関係に差があり過ぎだな…と、見てて可笑しくなってくる。


「ユリコというのは俺の母親のことなんだ。自分では若いつもりらしくて、真央に名前で呼ぶように躾けたんだよ」


還暦なのに呆れるだろう?と問われた。


「いえ、別に」


楽しそうなお母さんだ。
ギョーザの話を聞いた時も面白いと感じたけど今もだ。


「ユリコさんはねー、いつもひろに『新しいお嫁さんを貰いなさい』ってゆーんだよ」


ギョーザを齧ってた真央ちゃんがいきなりそう言いだし、課長は慌てたように「真央!」と叫んだ。


「要らないことを言うな!」


課長の顔はこれまでで一番強張ってた。それは直ぐに分かったけど真央ちゃんは違う。


「でもー、ホントのことだしぃー」


子供の純粋さって罪だ。
課長は困ったように息を吐き、私はその二人の会話を聞かなかったつもりでスルーしようとした。


「ひろは好きな人とかいないのー?例えばハヅキちゃんとかー」