リビングに着くと、「どーぞ」と言ってソファに座らされた。

目の前には黒いスタンディングピアノが置いてあり、横には大きなゴムの木の鉢が置いてある。


言うがままにクリーム色のソファに座ったけどいいのだろうか。
課長の娘さんは私の側で嬉しそうにしていて、それを見ると悪い気はしないのだけど。



「ごめん、横山さん。真央は遠慮とかまるで無くて」


コラッ!と怒ってるけど、娘さんにはこたえてない。
普段から怒られてもきっとこんな調子なのだ。


「折角だからお茶でも淹れるよ」


背中越しに逃げる課長の後ろ姿を目で追う。
リビングの向こう側にはキッチンがあり、対面式になってた。



「ひろー、慌ててお片付けして良かったね」


娘さんは座面の上に膝を付き、背凭れにお腹をくっ付けるようにして両足をバタバタと揺らす。

「言うな」とツッコんだ課長は引きつったような笑みを浮かべ、子供って一言多いよな…と誤魔化してた。


きっと私が来るというので、急いで掃除をしたのだろう。
申し訳ないな…と思いつつも課長の日常に触れられて嬉しかった。