好きな人が現れても……

日曜日の午後、課長のお宅に伺った。

最寄りの駅から歩いて八分程度の距離にある二十階建てのマンション。

そこの五階部分の角部屋の前でインターホンを鳴らすと、ガチャリとドアを開けて出てきたのは小さな女の子だった。


おかっぱ頭で目元は課長に似てる。
真ん丸な目には睫毛がキレイに生え揃い、鼻先は小さくて丸くて、唇は赤くて血色がいい。

会ったことはないけど、白雪姫ってこんな感じなのかな…と見惚れてた。
キョトンとした女の子は、口を開けると大きな声を発した。


「ひろー、知らない女の人が来たー！」


ハッキリした滑舌でそう言うと後ろを振り返る。
ギョッとした私の視界に、参ったな…という顔つきの課長が現れた。



「こ、こんにちは！」


課長の顔を見るなり背筋を伸ばして頭を下げる。
普段とは違う服装に嫌でも心音が跳ね上がった。


「こんにちは。悪いね。休みなのに」


課長はそう言うと小さな女の子を自分の方に引き寄せてしゃがみ、頭の上に手を置いた。