私は夫の腕の中で泣いていた。
怖くて、辛い本音を吐き出すかのように、ワンワン声を上げて泣いていた。

 夫は優しく髪を撫でて、泣いている私を「大丈夫、大丈夫」を繰り返し、なだめてくれた。


 「お義父さんには電話で少し事情を話した。
そしたらさ、一人で悩みを抱えるのは想像以上に辛いってさ……心配していたぞ。
凜子のお母さんも癌を宣告された時、なかなかお義父さんに言い出せずにいたらしい。

 もっと早く、気づいてやって力になってやりたかったって………

 それ言われたら、いても立ってもいられなくて、休暇届出して、新幹線に乗っていた。

 みんな凜子が大事なんだ」

 私は返事の代わりに頷いた。

 夫の言葉が身に染みる。
そしてーー夫婦の優しい時間が流れるーー



ーーーー
ーーー
ーー



 「ただいま!ママ!」
玄関から元気な美蘭の声が聞こえた。

 縁側までやって来ると、「パパも居た!」と嬉しそうに私達に抱きついてきた。

 
 正直、暑い。
暑苦しい。
けど、優しい家族の輪は、私の心に温かいエネルギーを注いだ。

 【リンリーンリーンリーン…………】

 風になびく風鈴の音色は、私達にエールを送るかのように鳴り響く。 

 「金魚の風鈴ちゃん可愛い」

 美蘭は背伸びをして風鈴に触れようとした。

 【リンリーンリーンリ…………………】 

 「みーちゃん(美蘭)それはおじいちゃんの宝物なんだ。
おばあちゃんとの想い出の大事な大事な風鈴なんだよ」

 父は微笑む。