あれは 彼だ

向こうから来るその人を
私は はじめて
はっきりと 見た


私が彼と出会ったのは20年以上前の
12月の初めだった

アルバイト先の上司が
医者の義弟と会わないかという

上司は信頼の厚い人だった
それから数ヶ月経って会うことになった

彼を初めてみたとき

懐かしい

そう感じた

私達はそれから何度か会った

釣り合わないことはわかっていたから
彼が医者でなければいいのに
そんなことを考えていた

それでも 彼を信じた
彼からプロポーズされた時の気持ちは
今でも忘れていない

その頃彼の転勤が決まった

彼は近くなると言ったけれど
環境が変われば 人は変わってしまう

嫌な予感がした