どくん、どくん、どくん

心臓がうるさい。静まれ、静まれ……!


ぎゅっと目をつむる。



私は、キスもその先もしたことがない。

でも、先生なら――。






ほっぺに柔らかい唇が当てられた。




驚いて目を開けたら、ものすごくバツが悪そうな顔をして、ふてくされたような目をして私を見ている先生が見えた。




「……はあ。もう、帰ろう……。心臓に悪い……」


脱力しきった先生は、背中を丸めたままギアを入れる。


「え、き、キスはしないの?」

つい聞いてしまうと、はーあと長い溜息をつかれた。


「本当にしたらヤバいでしょう」

「でも、今先生ほっぺにした……」

「違う。ぶつかっただけ」


うそだあ。
こんな、嬉しい気持ちになるぐらい、優しかったのに?