秋空の下で

「翔琉くん!」

私が止める隙もなく、喧嘩が始まってしまった。

「お前、腕落ちたんじゃねぇのか!」

「はっ…笑わせんな」

私は思わず目をつぶった。

怖くて震えが止まらなかった。

音がしなくなったと思って目を開けると、翔琉くんを抜いた全員が倒れて動けなくなっていた。

「怖かったよな…ごめんな…」

翔琉くんは泣きそうな声で私にそう言った。

「翔琉くん怪我してない?うちよってって!」

「ありがとう…」

私は翔琉くんを家によんだ。

幸い翔琉くんはかすり傷ですんでいた。

翔琉くん…強いんだな…

「咲黄…怖い思いさせてごめん。俺な、昔あーゆー奴らとつるんで、喧嘩したり、非行してた。」

「そうだったんだ…」

「あいつらは、俺の昔の仲間だった。今は、もうつるんでないし、そーゆーこともしてない。」

「そっか…翔琉くんが無事で良かった…」

そう言うと翔琉くんは黙って抱きしめてくれた。

私は涙が止まらなかった。

翔琉くんが無事で良かった、怖かったって思ったら涙が溢れてきた。

翔琉くんは、私が泣き止むまで抱きしめてくれた。

翔琉くんに抱きしめられると凄く安心する。

「翔琉くん…だいすき…」

ふとそう声に出した。
 
翔琉くんは少し驚いたような顔をした。

でもすぐに、

「咲黄だいすき」

そう返してくれた。

この人と会えてほんとに良かったって心の底から思った。

いつでも私を心配してくれて、優しくて、可愛いって沢山言ってくれて…

言い出したらきりが無いくらいだいすきなところ沢山ある。

でも、こんなことを言ってられるのも最初のうちだけだったことをこの時の咲黄はまだ知らない。