それからも女性は週に2回、お店に来ては本を呼んでる。

アルバイトの女の子達も彼女に興味を抱きはじめていた。

私はチラチラと女性を見ながらお皿を拭いていた。

女の子達はカウンターに座り私の顔をニヤけながら眺めてる。

これはまずい。この子たちに私がチラチラ女性を見ていることを気づかれてしますわ、そう思い、お皿を拭くのに集中した。

舞「マスター、あの女の人って何歳ぐらい?」

香織「大学生っぽいよね?」

舞「じゃあ、20歳ぐらい?」

香織「マスター、名前聞いた?」

朝比奈「いや、聞いてないよ。」

香織「なんで?」

朝比奈「なんで?ってお客さんだぞ。そんなこと聞けるわけないだろ?」

香織「じゃあ、私が聞いて来よっと。」

朝比奈「こら!香織!」

私の忠告も聞かず香織は奥のテーブルに座ってる女性に近寄り話しかけていた。

私は香織が彼女に何を話しているのか気になっていた。

香織「お姉さん、こんにちわ。」

「えっ?こんにちわ。」

香織「私、櫻井香織って言います。17歳の女子高生でーす。でね、カウンターの奥に座ってる子が石田典子。その横に座ってる子が足達舞。」三人ともこのお店でアルバイトしてるんだあ。と言っても海水浴シーズンだけね。」

「そうなんですね。アルバイトさんたちが居るとお店の中が明るくなりますね。」

香織「そして、マスターの名前は朝比奈優さん。37歳の独身でーす。」

「優しそうな方ですね。」

香織「ねぇ、お姉さんの名前教えて?」

「えっ?私の名前?三浦加奈子です。」

香織「三浦加奈子さんかあ。じゃあ、加奈子って呼んでいい?」

三浦「はい。櫻井さん、よろしくね。」

香織「下の名前で呼んでいいよ。」

三浦「じゃあ、香織さん、よろしくね。」

香織「はーい?加奈子さん、よろしくね。」

香織「加奈子は大学生?」

三浦「はい。女学院に通っています。」

香織「え~?バリバリのお嬢様?」

三浦「そんなことないですよ。」

私は二人が笑顔で会話している内容が聞こえてはいなかったが、二人の笑顔を見て何故かニヤけてしまっていた。

香織はカウンターに座っている二人の女の子を呼んだ。

香織「加奈子さん、こうして仲良しになったんだから、今度このお店で加奈子さんの歓迎会パーティーしましょうよ。」

三浦「えっ?そんな悪いですよ。それに、お店だって他のお店さんにも迷惑かかるし。」

香織「見ての通り、このお店はあまりお客さん来ないし。」

典子「パーティーかあ。いいわねぇ。」

舞「なんか楽しくなってきた。」

三浦「でも、私は普通のお店さんですよ。それに、お店のマスターさんにも相談しないと。」

香織「それは大丈夫。マスターは私が言ったことに文句言わないから。」

そう言って皆が私の方を見ている。私は何が何だか分からなかった。

香織「加奈子さん、来週の土曜日の夜7時にどう?」

三浦「えっ?そんなに早く?」

香織「何かその日予定でもある?」

三浦「いいえ。特にはないけど。」

香織「じゃあ決まりね。来週の土曜日の夜7時にこのお店に来てね。必ず来てね。」 

三浦「ありがとう。分かりました。」

香織は私の方を向くと指でピースのサインを出した。意味が分からなかった。