本格的な夏が来る前の季節は俺には苦痛でしかない。
1時間目の授業が終わって机に突っ伏していると
「ねぇ、貴浩」
愛らしい声で俺の名前を呼ぶのは幼馴染の光希。
髪はロングでふわっとしていて、目もくりっとしていて可愛い奴だ。
だから、彼氏もいる。
光希は俺を幼馴染としか見てないから、恋愛対象から確実に外されているんだ。
俺は顔を上げて光希を見ると、わざとらしくニコニコしていた。
何かあるとわかっているがここはあえて
「…何だよ」
と、聞くのがいつもの流れになっている。
「貴浩、買い物に付き合って!!」
買い物??
「…お前、彼氏がいるだろ」
「貴浩じゃないと駄目なの!!」
机に両手を叩きつけて、凄い音が教室に響き渡った。