コツコツと音をたてながら誰かがこちらに近付いてきた。



「ねえやだ、なんか本当に臭くない?」

「大丈夫、偽物だって」


若い男女の声がして、あたしは無理やり頭を動かして少しだけ顔を上げた。


女の人が男の人の腕に自分の腕を絡めて身を小さくしている。


カップルだろうか。


「まじむり~怖いって」


血だらけのあたしを見てその女の人はそう言い、ぎゅっと男の人にしがみついた。



ああ、どうしてあたしはこんなところに寝そべっているんだろう。


あたしだって、遊園地デートしたいのに……




でも、仕方がない。


あたしの両手と胴体は、床に杭で打ち付けられている。



動きたくても動けないんだ。