暫くしてやっと客が途切れ、外のざわめきが消えた。


煩かった乗り物の音も、眠ってしまったように静かだった。



もしかして、今は夜なのだろうか。


あたしの居る場所は、いつまでも薄暗いから時間が分からないのだけれど……



周りからは、何の音も聞こえない。


はあ、もううるさい悲鳴や罵声を浴びせられなくてすむ……



無音の空間では、あたしの小さな呼吸音や身じろぐ音が際立って聞こえた。



ザッザッ……

それに混じって、遠くからひとつの足音が聞こえた。



それは、あたしのたてる音をひとつ残らず掻き消すようにだんだん大きくなってきた。



この建物の出口から誰かが入ってきた。