放課後、購買部で買ったチュロスを片手に夕日が差し込む教室の中で机に突っ伏していた。
今は部活の活動時間内。
決してサボってる訳じゃない。
目を瞑って、極限まで周りからの情報を遮断して集中してるのだ。
口の中のチュロスの甘さは別だけど。
頭の中で次に描こうと思っている絵をなるべく詳しくイメージする。
詳しく詳しく……あ、チュロスが美味しい……じゃなくて、集中集中……
ガバッと突然体を起こし、チュロスを咥えて塞がっていた手を解放した。
そして、机の上に置かれている紙にペンを走らせる。
この間だけは時間が経つことも忘れて永遠とペンを走らせ続けられる気がする。
と言っても、途中で腕が痛くなってリタイアするけど。
1時間くらい経っただろうか。
私の目の前の紙にはさっきまで頭の中でイメージしていた景色が丸々コピーされたかのように描かれていた。
「ふぅ……さすが私」
誰もいない教室に私の独り言が響いた。
思いつきで描いた絵だが、これをコンクールに出そう。
自信作だし。
「題名……タイトル……うーん……」
右手を顎に当てて考える姿勢を取ってみる。
もちろんいきなり閃いたりする訳ではないが、なんとなく、気分の問題だ。
んむむむ……いくら夏の大三角形を描いたからといって、タイトルが『夏の大三角形』というのは何だか味気ない気がする。
「あっ! 閃いちゃった!」
左手の手のひらに右手のゲンコツをポンッと乗せて大きな声を出した。
もちろんこの空間には私しかいないから問題はない……多分。
そんなことを考えながら、顧問の先生に貰っていた応募用紙に氏名とタイトルを描いた。
『南雲紬"夏の思い出"』
これはこれでベタだけど、満足だ。
なんだか昔を思い出すような感じがして私的にはポイントが高い。
何にでもセンスが光るのが私なのだ。
運動神経については聞かないで欲しい。
画材をケースに丁寧に直し、顧問の先生のいる職員室に向かおうとした途中、あるモノに気づいてしまった。
「な、ななななんでここに人がっっ! あわわわわわわっ!」
「だ、大丈夫だよ! 見なかったことにするから!」
「聞いたことは覚えておくんだ!? もうお嫁にいけないよぉぉぉっ!」
「それも忘れるから! 落ち着いて!?」
教室の入口に棒立ち状態の男の子がいたのだ。
全く知らない子だし、コミュ症をこじらせている私にとっては難敵なので、ついテンションが空ぶってしまったらしい。
男子生徒は黒髪を目に入るギリギリ手前まで伸ばしていて、黒縁のメガネをかけていた。
長袖のカッターシャツが小刻みに震えているのを見ると、私の狂乱っぷりに驚いたらしい。
男の子はペコペコと頭を下げて逃げていった。
完全にドン引きされてしまった。
今まで人目のつくところではやらなかったのに……無念……。
この際過ぎたことは気にしないでおこう。
ポジティブ思考は私の長所のひとつなのだ。
「でもあの子、どこかで見たことがあるような……気のせいかな?」
頭の中のモヤモヤはすぐに絵の事で吹き飛ばされた。
今は部活の活動時間内。
決してサボってる訳じゃない。
目を瞑って、極限まで周りからの情報を遮断して集中してるのだ。
口の中のチュロスの甘さは別だけど。
頭の中で次に描こうと思っている絵をなるべく詳しくイメージする。
詳しく詳しく……あ、チュロスが美味しい……じゃなくて、集中集中……
ガバッと突然体を起こし、チュロスを咥えて塞がっていた手を解放した。
そして、机の上に置かれている紙にペンを走らせる。
この間だけは時間が経つことも忘れて永遠とペンを走らせ続けられる気がする。
と言っても、途中で腕が痛くなってリタイアするけど。
1時間くらい経っただろうか。
私の目の前の紙にはさっきまで頭の中でイメージしていた景色が丸々コピーされたかのように描かれていた。
「ふぅ……さすが私」
誰もいない教室に私の独り言が響いた。
思いつきで描いた絵だが、これをコンクールに出そう。
自信作だし。
「題名……タイトル……うーん……」
右手を顎に当てて考える姿勢を取ってみる。
もちろんいきなり閃いたりする訳ではないが、なんとなく、気分の問題だ。
んむむむ……いくら夏の大三角形を描いたからといって、タイトルが『夏の大三角形』というのは何だか味気ない気がする。
「あっ! 閃いちゃった!」
左手の手のひらに右手のゲンコツをポンッと乗せて大きな声を出した。
もちろんこの空間には私しかいないから問題はない……多分。
そんなことを考えながら、顧問の先生に貰っていた応募用紙に氏名とタイトルを描いた。
『南雲紬"夏の思い出"』
これはこれでベタだけど、満足だ。
なんだか昔を思い出すような感じがして私的にはポイントが高い。
何にでもセンスが光るのが私なのだ。
運動神経については聞かないで欲しい。
画材をケースに丁寧に直し、顧問の先生のいる職員室に向かおうとした途中、あるモノに気づいてしまった。
「な、ななななんでここに人がっっ! あわわわわわわっ!」
「だ、大丈夫だよ! 見なかったことにするから!」
「聞いたことは覚えておくんだ!? もうお嫁にいけないよぉぉぉっ!」
「それも忘れるから! 落ち着いて!?」
教室の入口に棒立ち状態の男の子がいたのだ。
全く知らない子だし、コミュ症をこじらせている私にとっては難敵なので、ついテンションが空ぶってしまったらしい。
男子生徒は黒髪を目に入るギリギリ手前まで伸ばしていて、黒縁のメガネをかけていた。
長袖のカッターシャツが小刻みに震えているのを見ると、私の狂乱っぷりに驚いたらしい。
男の子はペコペコと頭を下げて逃げていった。
完全にドン引きされてしまった。
今まで人目のつくところではやらなかったのに……無念……。
この際過ぎたことは気にしないでおこう。
ポジティブ思考は私の長所のひとつなのだ。
「でもあの子、どこかで見たことがあるような……気のせいかな?」
頭の中のモヤモヤはすぐに絵の事で吹き飛ばされた。
