「私は桜坂小鳥。まぁ、普通科の教師だから関わることもないと思うけど一応、よろしくね」

小鳥先生に連れられて早5分。辿り着いたのは敷地内にある森。………森?

「……えっと、ここは……」

「特別科は文字通り特別でね。特別科と普通科の接触は禁じられてるの。だから私が案内できるのはここまでよ」

「特別?」

「そう。貴方も特別科に配属されたってことは何か並々ならぬ事情があるのでしょうね。ここには様々な事情を抱え込んだ生徒達が入ってくるけど特別科はその中でも一際異彩を放っているの。生徒だけじゃなく職員まで問題児揃いよ。だから初めは大変だと思うけど慣れてくれば同じような境遇に共感した仲間が出来ると思うわ」

穏やかに微笑んだ小鳥先生はペラペラと説明してくれた。

「………俺には仲間なんて……必要ない」

「え?」

「あ、いえ。なんでもありません」

俺は只、復讐するだけだ。

「じゃ、もう行きなさい。間違いなく遅刻確定だけど『桜坂小鳥先生と話してた』って担任の先生に言えば大丈夫だから」

「はい。ありがとうございます」

「いえいえ。姉さんによろしくね」

「は?」

頭を下げて上げたときにはもう小鳥先生は消えていた。

……今、姉さんって言わなかったか?

「……不思議な人だ」

少し考えて森に向き直った。

そして自問自答を繰り返す。

これからはもう戻れない。

本当にこれでいいのか、中城冬馬。

自分自身の問いに鼻で嘲嗤う。

はっ、愚問だな。

俺はずっとこの時を待ち望んでたんだ。

あの日からずっと真実を知る為に死物狂いで証拠をかき集めてきた。

血反吐を吐く思いをしながら漸くここまで漕ぎ着けたんだ。

それを今更…………。

俺は真実を曝け出すためならなんだってやってやる。

例えこの身が朽ち果てようとも。

どこまででも堕ちてやるよ。

俺は目の前の森をしばらく見上げた後、一歩足を踏み入れた。