叫んで駆け寄るけど、遙花の目は遠くを見つめたままで返事がない。
誰かが呼んだ救急車で病院に運ばれた。
私の怪我は、たいしたことなく、処置室で治療しレントゲンなどの検査をされた。
治療や検査の最中も遙花のことで頭がいっぱいで、看護師や先生、放射線技師たちに遙花のことを聞いたけど、皆治療が終わってから、検査が終わってからと教えてはくれなかった。
やっと解放されると、病院内にいるはずの遙花を探した。

冷たいガラスがはってある部屋に遙花はいた。
たくさんの管につながれ、電子機器に囲まれた場所。
そこは集中治療室だった。
無機質な空間の中に横たわる遙花からは、『生』を感じられなかった。
遙花の両親は、ガラスでさえぎられた場所で、お守りを握りしめてただ泣いていた…。
様々な感情と言葉があふれて何をしたらいいか分からなくて、ただ部屋の中にいる遙花を見ていることしかできなかった…。
事故から数時間あとに母親が病院に来た。
遙花の両親と何かを話したあと一言だけ私に言葉を残し帰っていった。