「寝ないの?」

彼女は不思議そうに僕を見た

何も言わない彼女に少し戸惑いを感じてしまう

「んー」

そんな僕の内心に気が付いたのか

「私は」

彼女は口を開いた

「今まで生活してきたという記憶がありません。」

僕は耳を疑った

「今まで確かに日々を1日1日過ごしてきました。ですが、」


彼女は僕の目の前で立ったまま目を閉じてしまい、翌日になるまで目を開けなかった

倒れることもなく、微動だにもしなかった

おかげで僕は一睡もできなかった


「おはようございます」

「おはよう」

彼女は何事もなかったかのように目を開け、挨拶した後

どこかへ歩いていて行ってしまった

気にせずにトイレに行き、顔を洗い、歯を磨いていると

泥だらけになって彼女が僕の育てた野菜を掴み持っていた

「わあ!な、何してたの!」

「野菜をとってきました」

嫌な予感がして僕は温室へ走った





予感は的中していた

「ぼ、僕の温室が…」