「………。」



僕とのデートはそんなに辛いものだったのだろうか。


「桐生くん、ごめん。あのね、」



稲嶺の綺麗な顔の眉間にシワが刻まれる。



何を言われるんだろう。



きっといいことではないのは確かだ。



「暫く、距離をおきたいの。ノートに何も書いてないことも気になるし、もしかしたらこれからもこういう事があるかもしれない。桐生くんに迷惑もかけちゃう。だから、時間を取って考えたいの。」



稲嶺の目は潤んでいたが、そう言った時の表情はしっかりと自分の意思を決めている顔だった。



僕が何を言っても無駄だろうな…。



「わかった。」







こうして、僕らの近づいたはずの距離は


たった1日の出来事で


あっという間に遠くなっていった。