そばにいたかったのは私の方

「えっと、次の授業は――。」

昼食を済ませ、教室に戻る為廊下を歩く。

「…でね、噂だと…」

他の生徒の声が聞こえてくる。

「怖いよね〜、顔はかっこいいのに…」

「今日は屋上で寝てたって」

「屋上でって…猫じゃないんだから…」

「聞かれでもしたら殺されるよ〜」

「やめてよ」

(…ん?)

屋上で寝ていた?
それはさっきの男子生徒のことではないのだろうか。

女の子の会話に、そっと聞き耳を立てる。

「…他校の有名なヤンキーと喧嘩したのは知ってるでしょ」

「有名な話じゃん」

「その時ね、相手はボロボロなのに自分は傷一つ作らなかったんだって」

「うわあ」

「その話が広まって完全に不良の立場になったとか」

「尚更誰とも話してるの見ないよね」

「まわりも怖がってるからねー」

「顔はかっこいいのに…」

「あんたそれずっと言ってるよね…」

「顔だけなら、タイプなの!」

「確かにかっこいいけどね」

(……!?)

不良……!?

さっきまで一言二言会話していたあの人が、有名な不良?

紅鈴愛は耳を疑った。

いやでも、あの視線。
目だけで人ひとり殺せそうな、殺人的な目。
不良って、本当なの…?

(…あれ?でも…)
(誰とも話してるの見ないって…)

先ほど、少しだけれど話をした。
目付きは鋭くても、何かされたわけでもない。

(あ)

「俺を知らないのかって…」

あの人が有名な不良だから…?
自分が噂されているのを知っていて
だから、自分を知らない人に学校で出会ったことを不思議に思ったのかもしれない。

(でも……)

誰とも話さないなんて、寂しくないのだろうか。
友達がいない紅鈴愛も、今は慣れたものの初めはやっぱり寂しかった。あの人も、一人でいることに慣れてしまっているの?

少しだけ、あの男子生徒の事が気になった。