両親の私に向けて微笑んでくれた顔以外は背中しか知らない。
二人の怒ったり、悲しんだり、喜んだり、そんな当たり前の表情も私は知らない。
私が思い出せるのはいつも、二人の後ろ姿だった。
だけど、不思議と寂しいとか辛いって気持ちはなかった。
むしろ、誇らしいって思ってた。
なんの仕事やっているか分からなかったが常に仕事をに懸命にやる両親が好きだったからなのかな?
だから、親が遠くで仕事してくると言われても、反対できず、暫く、母方の私達一家と唯一仲の良いおばぁちゃんに育ててもらったんだ。
でも、なかなか迎に来ない私の両親を待てずにおばぁちゃんは亡くなってしまった。
お葬式にも、私の両親は帰ってこなかった。
その後も、いろいろあったけど、私の両親は帰ってこなかった。
そして、現在
幼馴染みの初内家に親が遠くに行っている間だけお世話になることになったのだ。
帰りの挨拶が終わり、輝が、教室に迎に来たので一緒に輝の家まで帰ることになった。
輝「あ、ちょうどかすみの荷物が届いたみたいだよ。」
「ほんと!?じゃあ、帰ったら車から部屋まで運ばなきゃね!」
輝「うん。俺も手伝うよ」
「ありがとう、てる!」
久しぶりに輝と帰れて嬉しいなぁ。
昔はよく手を繋いで帰ってたっけなぁ~
「ねぇ、てる。手を繋いで帰ろうよ!昔みたいに!」
輝「かすみは本当に変わらないな?」
「…う、ん!」
輝「…俺のことをてるって呼ぶとことか?」
「あははっ、たしかに~」
一瞬、迷ってしまった。
あの頃の私とはもう、全然違う。
でも、変わってしまった私を、輝は、てるは、受けいれてくれるのかな ーーー 、?
新しい街、新しい空気、新しいお家。
すべてが新鮮で、ちょっと不安だけどワクワクする!!
「スーー、はぁ~~」
んー、深呼吸すると気持ちいいな~~…
…それにしても…
晶「てるー!これ運んで!」
」
輝「おー。」
さっきから晶さん、てるに頼んでばっかり!
もー、あれくらいの小さいダンボールなら私も持てるし…
「いやいや。それくらい私が運ぶよ!」
晶「いや、かすみは怪我しそうで怖いし…」
輝「…うん、ドジされても困るし…」
うっ、たしかに荷物ぶちまけそう…
「だ…大丈夫だから!もー、二人は過保護すぎ!」
そう言って荷物を奪った。
輝「ちょっ、待っ!その段ボール…」
…が、思ったよりも重い!?
《ガン、バサバサ、ドス》
あら、本当にぶちまけた…
「…えーっと、てるなんか言った?」
輝「その段ボール、本が入ってるから凄く重いよって。」
「そっか、ありがとう。落としてごめん。これからは指示を聞きます…」
輝「うん、とりあえず、あゆの迎行ってきて?」
「うん、わかった!」
あーあ、またやらかしちゃったなぁ…迷惑、かけちゃった、な。
晶「かかすみ?どっか行くのか?」
「あ、うん、向こうの保育園にあゆちゃん迎に行ってくるよ!」
晶「なっ!!一人で大丈夫なのか!?」
「晶さんてば、私はもう高校生だよ?大丈夫だから、行ってくるね!」
そう言って走って逃げる笑
晶「こら!まちなさーーーイッ!」
晶さんが叫んでたけど、まぁいっか!笑
晶さんは本当に心配症なんだ、輝もそうだけど、あの二人は私に対してすごく過保護なの。
それは、きっと、あからさまにわかり易く私がドジだからって理由だけじゃない。
私が両親のことを今でも気にしていると思ってるんだろうな。