4月。
私は心地のよい春風に吹かれながら、駅のホームで電車を待っていた。

つい、ふあぁ…と大きな欠伸をしてしまう。
仕事が溜まっていたせいで昨夜は寝不足、気づいたら今朝になっていた。

「…間も無く、2番線に各駅停車XX行きが参ります。危ないですので……」
独特な雰囲気を醸し出す駅員のアナウンスを耳にしながら、私は一歩足を前に出した。

その時。

どんっ…と体に何かがぶつかった瞬間、バランスを崩した私は「あっ…」と声を漏らす。

景色が反転する。落ちる?このまま?
電車はすぐそこまで迫っている。怖い。

咄嗟に目を閉じた私の腕を誰かが掴んだ。
そしてそのままふわりと私の体を抱き寄せる。

あ、なんだか心地いい。
そう思って目を開くと、息を切らした男の駅員さんがいた。

「大丈夫ですか?お怪我は、ありませんか?」

「大丈夫です。ありがとうございます。」
その言葉を言い終える前に、駅員さんは周りの整備をし始めた。
私は1つ息を吐き、駅員さんに頭を下げてその場を離れた。