あの夏の続きを、今



そして、引退式が始まり、1、2年生が1人ずつ3年生に向けてメッセージを言う。


フルート、クラリネット、サックス────と、パートごとに進んでいく。


そして、トランペットの番。


前田先輩とカリンに続いて、私の番だ。


椅子から立ち上がり、曲の出だしを吹くときのように、すうっ、と息を吸ってから、声を出す。


「4ヶ月という短い間でしたが、3年生の先輩方には大変お世話になりました。

部活動体験の時から、優しく接してくださって、すぐに吹奏楽部の環境に馴染むことができました。

特に、松本先輩には、様々なことを教えてもらって、成長していくのを実感できました。

コンクールでは、ミスをしてしまって、先輩方の期待に応えることができなくて………っ………申し訳………っ……ひっく………ない……です…………っ………ぐすっ……」


気がつくと、思わず涙が溢れ出していた。


そこで初めて、松本先輩がいなくなってしまうことが、私にとってはこんなにも悲しいものなんだと気づく。


「これからは………っ、ぐすっ、……受験、頑張ってください……っ!」


そう言い終えてから、そっと座る。



────この時、私の心の中には、あの夏祭りの時と同じ、「無意識の感情」が芽生え始めていたのだった────