「えーと、いつもどのへんで詰まるのかな?」

「ここの小節の一つ目の音から、次に移るあたりでどうしても引っかかってしまうんです」

「なるほどね、じゃあ、ここのフレーズを分割して、ゆっくりのテンポで練習してみようか。

えーと、楽譜見せて………」


そう言うと松本先輩は、私のいる方にぐいっと上半身を寄せて、私の楽譜を覗き込んだ。


「えっ、うわあっ」


急に先輩との距離が近くなって、思わず驚いて声を発してしまったが、先輩は何も気にしていないようだ。


「じゃあ、まず、最初の3つの音をひたすら繰り返し吹いてみて。

メトロノームのテンポに合わせて、あと、ここにスラーがついてるから、スラーもつけて」


言われた通り、その3つの音をメトロノームに合わせて繰り返し吹いてみる。


先輩と一対一のレッスンでは、先輩がお手本として一緒に吹いてくれることが多いから、こうしていきなり単独で吹かされることは珍しい。


松本先輩のこんなに近くで、しかも単独で吹く音を聞かれるなんて、ドキドキする。


1、2、3、……1、2、3、………


「出来るようになってきたね。じゃあ、次は、次の音を付け足して、4つの音を楽譜通り繰り返してみて」


言われた通り、今度は4つの音を繰り返す。


繰り返し吹くうちに、これもこなせるようになってきた。