ハルトの姿が見えなくなってから、私はメトロノームのテンポを上げる。
そして、なかなか上手くいかない、速いテンポの後半部分の練習。
楽譜に書かれているテンポは♩=144だけど、参考音源のテンポはそれよりも明らかに速い。
先生も、最終的には♩=160くらいでするつもり、と言っていた。
まだそんな速いテンポでは吹けないから、とりあえずメトロノームは♩=144に合わせて、後半部分を吹き始める。
タカタカ、タカタカ。
8分音符がひたすら並んでいるこのフレーズは、少しでも油断していたらテンポに追いつけなくなってしまう。
急がないと。もっと、速く。
でも、テンポの流れに追いつくことばかり意識していると、今度はメトロノームより速くなってしまう。
本当に、コンクールまでにちゃんと吹けるようになるのだろうか。
少し離れたところにいる松本先輩は、ほぼ参考音源に近い速いテンポで難なく吹きこなしているのに。

