最初はゆったりとしたアルトサックスのソロから始まる。


流れるような音色で、観客たちを一気に曲の世界へ惹き付けたら────


一気にテンポが変わる。


そして、私とカリンの吹く、最初のフレーズ。


イントロが終わってAメロに入ると、トランペットが全体をリードしてメインメロディーを奏でる。


ここが私とカリンにとっては一番の見せ所だ。


シャープやフラットに気をつけて、指揮に合わせて………先輩に言われたことに気を付けながら、一音一音を刻んでいく。


曲はどんどん進んでいく。私とカリンは、吹いてはまた休み、吹いてはまた休み、の繰り返しだ。


そして、3小節続く長い音。


腹式呼吸を意識して、しっかりと延ばす。


どこまでも、続いていけ、私の奏でるこの音────


そして、1番カッコからリピートで、もう1度繰り返し。


もう1度、メロディーを吹いて、そして、2番カッコへ。


最後は先輩たちの音で、かっこよくクライマックス。


最後の音の余韻がホールに残る。


西島先生の合図で私たちは立って、しっかりと客席のほうを見る。


すると、あちらこちらから、観客の拍手が降り注いできた。


これが、本番────


これが、観客の前で演奏するということなんだ────



たくさんの観客の拍手に包まれる喜びを噛みしめながら、私はトランペットをしっかりと握っていた。