あの夏の続きを、今



傾き始めた太陽に照らされた一本道を、私は一人、前へ前へと進んでいく。


────もしもここで松本先輩に会えたら。


カリンの言う通り、私は今、気持ちを伝えるべきだろう。


今まで何度も、この帰り道で先輩を引き止めてきた。


先輩には先輩のやりたいことが、生き方があるはずなのに、私の勝手なわがままに巻き込んでしまって。


────それも、もう終わりにしなければいけない。


叶わないとわかっている夢を、いつまでも見続けることはできないのだから。


このまま、私の恋も、先輩後輩の関係も全て終わって、私たちはそれぞれの道を行く。


だから────せめて、その前に、私の想いを伝えられたら。


そう思いながら、私は前へ前へと進む。


駅の前を通り過ぎると、丁度市街地の方から来る電車がホームに入ってくる所だった。


腕時計に目をやる。あれが、カリンの言っていた、「先輩が乗っているかもしれない」電車で間違いないだろう。


私は自転車の速度をゆっくりと落とし、住宅街へと続く坂道を歩いて登り始める。


どうか、先輩が追いついてくれますように。


どうか、先輩の方から、私に気づいて声をかけてくれますように。


そう願いながら、ゆっくりと坂道の上に向かって歩みを進める。