私とカリンはそれぞれドーナツと飲み物を選ぶと、窓際の2人用の小さなテーブルに向かい合って座る。
「カリンたち、学校ではいつも会ってるけどさ、こうやってプライベートで会うの、初めてだよね」
「確かに、なんか新鮮だよね」
「今度、また一緒に遊びに行かない?志帆が浜百合に行っちゃう前に!」
「うん、いいね、約束だよ!」
椅子に座ったカリンは早速ドーナツを一口齧ると、私に聞いてくる。
「ね、ね、志帆、今日、すごい奇跡だったよね!先輩が見に来てくれてさっ」
「え!?あ、うん、その通りだよ!」
いきなり先輩の話題を振られ、驚きつつも私はドーナツを食べつつカリンに返事をする。
「志帆はさ、松本先輩に告白するって言ってたけど、具体的にはいつぐらいなの?」
「うーん……そういえば、あんまり深く考えてなかったなぁ、コンクール終わって次会った時、ぐらいにしか思ってなかった」
「そっかー。上手くいくといいね」
「上手くいく、か。何をもって上手くいく、なんだろうね?私、これが成功するとは思ってないし」
「そうなの?」
「うん、でも、もうなんか今更、付き合うとか付き合わないとか、もうどうでもいい気がするんだよね。どうせ私は浜百合に行っちゃう訳だし。ただ、この気持ちだけはちゃんと伝えたいし、私のことは忘れて欲しくないの」
「そうなんだね…」
それからしばらく、私とカリンはドーナツを食べながらあれこれ話をしていた。
その時、突然、カリンの学校指定のナップサックの中から、ピロリン、と音が聞こえた。
「あっ、やば、携帯マナーモードにするの忘れてた!」と言いながら、中からスマホを取り出すカリン。
「なんだ、お兄ちゃんからか、って……えぇ!?いいなーー!!」
「カリン、どうしたの?」
「今、カリンのお兄ちゃん、さっきの先輩たちみんなと一緒に街に出かけて遊んでるんだってー」
「山内先輩?いいなーー!ってことは松本先輩もいるの?」
「そうなんじゃない?」
「羨ましいー!」

