そして、午後の合奏も特に大きな問題はなく終わった。
練習を終える前、寺沢先生はこう言った。
「今日の合奏は皆、それぞれ上手くやっていたが、明日は明日。本番で何が起こるかは誰にも分からない。それでも、皆がこれまで積み上げてきたもの、皆がステージで奏でる一つ一つの音は、他の誰でもない、君たちの音だ。
だから、その時の自分に出せる音を、精一杯出しなさい。それが、結果に関係なく、他でもないJ中学校吹奏楽部としての、最高の演奏、最高の思い出になるはずだから」
そして、一呼吸置くと、「じゃあ、練習を終わります。本番で会いましょう、それでは」と、いつもの調子で言った。
『ありがとうございました!!』
部員たちはいつも以上に気合いのこもった挨拶をして、それぞれ楽器を片付け始める。
私も自分のトランペットを片付けていると、後ろからカリンに声をかけられた。
「ねえねえ志帆!この後暇?」
「うん、暇だけど」
「丁度良かった!あのね、引退式の時に後輩に渡すプレゼント、これから一緒に買いに行かない?」
「プレゼント!そういえばすっかり忘れてたよ、私も行きたい!」
「オッケー!じゃあ、片付け終わったら校門で集合ね」
「はーい」

