とぼとぼ歩いて、私は、西棟と中央棟の間の中庭までやって来た。


ここなら、皆がいる場所からは建物の陰になって見えない。


私は日陰のベンチにそっと腰を下ろす。


夏休みで誰もいない静かな校舎の間に、ぎらぎらとした陽射しと蝉の声だけが、とめどなく降り注いでくる。


空を見上げると、いつもと同じように、透き通る青の上を、真っ白な綿雲がいくつも流れていく。


青い空に白い雲。「マーチ・スカイブルー・ドリーム」が奏でる風景。


いつもそばにあったはずのその景色も、今はとてつもなく高く、遠く感じられる。


手を伸ばしても、決して届くことはない。


「空」なんて、そういうもんだ。


スカイブルー・ドリームの「ドリーム」が表しているもの。私には到底、届きそうにないものだろう。


もう、夢なんて諦めるんだ。何もかも。そうすれば楽になれるから。


そう思っても、トランペットを手放した自分を想像すると、ただ苦しく、悲しくなるばかりだ。


────結局、私は、トランペットがやりたいんだ。


浜百合高校に行って、全国大会に行きたい気持ちだって、まだ残ってるんだ。


だから、諦めることを考えて、こんなに苦しくなってしまうんだ。


────でも、トランペットは私には向いてないんだって、私の出す音が証明している。


この夢は、願っても決して叶うことはないんだ────


そう思った瞬間、私の両方の目から涙が溢れ出した。