会場を出て、皆が自転車に乗ったところで、ハヅキたち吹奏楽部員は皆、私の家とは反対の方向に帰っていった。


残されたのは、私とセイジだけだ。


「一緒に帰るかー」

「うん」


私とセイジは途中まで自転車で坂道を登り、半分ほど登った所で私が疲れて自転車から降りると、セイジもそれに合わせて降りて歩き始めた。


暗い道を照らす僅かな街灯の明かりの下、セイジはずっと他愛もない話や面白い話を聞かせてくる。


────だけど、私の胸の内にはずっと、モヤモヤした何かがつかえていた。


セイジは────前は絶対、こんなんじゃなかったはずだ。


小学生の頃はもっと、事あるごとに「志帆のバーーーカ!」などとからかってきたり、どうでもいい知識をひけらかして自慢してきたりしていたのに。


セイジはずっと、そういう人だと思っていたのに。


今は、何かが違う。


でも、うまく言葉にできない。


この違和感は、何なんだろう。


私はセイジの横顔を、ちらりと見上げる。


隣で笑顔で話しているセイジの声は、いつの間に声変わりしたのか、もうずいぶんと低くなっていて、昔のようなキャンキャンした声の面影は感じられなくなっていた。