────あれから数日経った頃。




気がつくと私は廊下のような場所にいた。


前にも見たような、無限に続く長い長い廊下のような場所に。


自分が置かれた状況もよく分からないままに、茹だるような暑さの中をひたすら歩いていくと、そこにはレナがいた。


────また何か酷いことを言われるんじゃないか。


突然私の中にそんな考えがすっと浮かんできた。


そして、気がつくと私は身体の向きを180度変えて、反対の方向へと歩き始めていた。


その時、背後から声が聞こえた。


「志帆……」


────レナの声だ。


驚いて振り返ると、レナは私に背中を向けたまま、元々明るい性格のレナからは想像もつかない、今までに聞いたことのないような悲しそうな声で話し始める。


「だって……志帆なら、……志帆なら、また元に戻れるって思ってた……

だけど、それすら許されなかった……

きっと自分は、よっぽど……」


その一つ一つの声を聞く度、私の胸の奥が氷のように冷たくなっていくのを感じた。


私が何かを言おうと口を開いたその瞬間────







ピピピピ、ピピピピ、と、目覚まし時計の音が聞こえてきた。


私ははっと目を覚ますと、慌てて目覚ましを止める。


カーテンの隙間から差す朝日。シャンシャンシャンシャンと降り注ぐ蝉の鳴き声。


────いつもの私の部屋だ。


────ということは、夢だったのか。


何とも言えない気持ちになりながら、ベッドを降りる。


レナは今、私のことをどう思っているのだろうか。


今更仲直りとかそんなことをしようにも、もう現実の世界での二人の心の距離は、取り返しのつかないほどに離れてしまっている気がする。


もう遅すぎるのだ。きっと。


このままずっと、後悔し続けるしかないのだ────


そう思いながら、私は部屋の電波時計に表示されている日付を見る。


────7月31日、日曜日。


セイジと約束していた、例の夏祭りの日だ。