「……松本先輩?」
カリンは私の目をじっと見つめて言う。
「その通り。お見事!」
私は微笑みながらうなずいた。
「そっかぁ〜!松本先輩かぁ〜!確かに松本先輩、優しいもんね!カリン、志帆の恋、全力で応援するよ!」
カリンは目を輝かせながらそう言って、私の手を強く握り、激しくぶんぶんと振った。
「ちょ、カリン、痛いって」
「あの4人にも、教えなきゃ!」
カリンは私の手を離すと、「志帆の好きな人当てクイズ」に熱中している4人の方に向き直った。
相変わらず、アキとハルカは頭を悩ませているようだ。
「ほらほら〜、今ハヅキが口パクで名前言ってるから〜頑張って当ててよ〜」
「丸本?」
「だから違うってば〜」
「先入観にとらわれたらだめって、どういう意味なの〜?全然わかんないよ!」
そこへカリンが割って入る。
「カリン、分かったよ〜!教えてあげよっかー?……志帆、言っていい?」
「うん、いいよ」
すると、アキとハルカは期待に目を輝かせて、カリンの元へと寄って行く。
「え〜、だれだれ?」
「教えて教えて!」
カリンは身を屈めて、2人に向かってこそっと松本先輩の名前を告げた。
「あーーーーーー!」
「そっかーー!そういうことだったのかーーー!」
2人とも、納得した表情で何度もうなずいている。
「ようやくわかってくれたね」と言いながら、ハヅキとミホも駆け寄ってくる。
私は胸のつかえがすうっと取れていくのを感じた。
もう隠さなくていいんだ。
もう嘘はつかなくていいんだ。
やっと、安心できた気がする。
「それでそれで??いつから先輩のこと好きだったのーー?」と、カリンが目を輝かせて聞いてくる。
「1年生の時から……もう、先輩が引退した後なんだけどね」
「えーー!すごーーい!一途だねぇー!」
後ろで聞いていたハヅキとミホも、「なんだかすごーい!ドラマチックー!」「いつも一人で真剣にトランペット吹いてる志帆の裏側に、こんな一面があったなんてねー!」と騒いでいる。