【2016年 5月中旬】





建物の外に出ると、そよ風が私の頬を撫でていった。


眩しい太陽に照らされた芝生。その向こうに見えるのは「平和の礎」。緑の大地の向こうに広がっているのは、果てしなく青い空。


その穏やかな風景に、私はなんとなく、ほっとするような、安心するような、そんな気持ちになる。



────私たち3年生は、今、2泊3日の修学旅行で沖縄に来ている。


今は1日目の午後。ついさっきまで、私たちの班は平和祈念資料館を見学していて、たった今見学を終えて外に出てきたのだ。


これから、「平和の礎」へと向かう。


まっすぐ歩いていくと、視界が開けた。


すぐそこに見えるのは海だ。果てしなく広がる、穏やかな青い海。


「すごい……この海、すっごく綺麗……」と、私の隣にいるハヅキが呟く。

「本当……想像してたのよりも、ずっと……どこまでも果てしなく続いてるって感じがすごい」


私とハヅキは柵の方まで近づいて、海を眺める。


吸い込まれてしまいそうなほど、壮大な海と空。


どこまでも透き通った、空の青と海の青。


降り注ぐ太陽の光が、それをいっそう輝かせている。


海とは無縁な山奥の田舎で育ってきた私にとって、この景色は、まるで別世界のように見える。


海というものが、こんなにも素晴らしく輝かしく、優しいものだったなんて。