私はもう一度、手紙を読み返した。


私がアカリ先輩のために、今からでもできること。


それは、カリンと協力して、これからもより良いトランペットパートにしていくこと。


それから────私の得意な音、低音を伸ばしていくこと。


私は今までずっと、1stの高音こそがトランペットの魅力であり、これを吹けることこそが成長の証だと思っていた。


けれど、2ndや3rdのハーモニーも、そこに存在している以上は、1stと同じくらい、重要なんだ。


どうして私は、今までそこに気づけなかったんだろう。


私は、松本先輩のような高音を出せるようになることを目標としてきた。


けれど、それじゃ駄目なんだ。


私は私の得意な部分を伸ばしていく。それこそが、松本先輩のような才能あふれるトランペッターになるための道なんだ。


松本先輩も、今は他の楽器の音を引き立てる役割の低音楽器であるユーフォをやっている訳だし────


…私って、本当に考えが狭くて、愚かだったんだな。


自分が情けなくなる。


────決めた。私はこれから、2ndや3rdで、1stを引き立てるための、最高のハーモニーを作り出していこう。


それが、私に与えられた、使命なんだから。


私のあるべき姿を見出してくれたアカリ先輩が、私に託した使命なんだから。


私はそっと便箋を封筒に戻すと、大事な物を入れておくための鍵付きの引き出しにそれをしまった。



────アカリ先輩。


先輩の思いを無視し続けて、本当にごめんなさい。


そして────今まで本当にありがとうございました。


これから私は、もっともっと頑張っていきます。


トランペットパートを引っ張っていく、先輩として。


そして、アカリ先輩の後輩として。


先輩のために。



松本先輩と同じように、大切な先輩のために────