あの夏の続きを、今



そしてバージョン7へ。


8分の9拍子で、陽気なメロディーが奏でられる。


(アクセントがあることで、波が生まれるんだ。何も考えずにぺたーって吹いても面白くないだろ?)


波のように、生き生きとしたイメージ。それが、聴いている人にも伝わるように。


私は音楽室の窓から見える風景を思い出す。


────あの入道雲に向かって吹く。


どこまでも、届くように………


少しの間のメゾピアノの後、再びフォルテへ。


私はフレーズの初めの4分休符で思いっきり息を吸う。


ここからバージョン8に入るまでの間、息が吸えない。


フォルテからフォルティッシモへ。精一杯の音量で、スラーとアクセントをつけて────


そして、いよいよ最後のバージョン8。


スウィングのようなリズムの、16分の12拍子。


これまでのバージョンの集大成のようなアレンジだ。


それぞれ違う役割を持った楽器の音が、まるでパズルのように重なり合い、組み合わさって、一つの音楽を作り上げる。


そこには、ほんの少しのずれも許されない。


一つ一つの音を、正確に刻んでいく。


クレッシェンド、デクレッシェンド。波のように音符の並んだ部分を過ぎれば、いよいよクライマックスだ。


力強く響くフォルティッシモ。


そして、最後のメロディー。


私の出せる限りの音に乗せて────


フォルテが3つ、フォルティッシッシモ!!!


しっかりとした和音になって、力強く伸びたその音が終われば、もう、最後の音だ。


正確に。だけど、思い切り────


────ぱん、ぱん、ぱん、ぱんっ!


────決まった!


1stのアカリ先輩とカリンの吹く、高い「ラ」の音もしっかりと決まった。


そして、曲は終わった。