途切れ途切れになりながら遠くへと流れていく雲の隙間から差し込む夕日が、今日も景色をオレンジ色に染めている。


音楽室を出てから、自転車に乗り、リサを待つ。


2年生になってからは、毎日のようにリサと一緒に帰っている。


少し経ってから、自転車置き場を出ていこうとする大量の自転車たちの間を縫って、リサがやって来た。


「あっ、志帆、お待たせ〜」


リサと一緒に校門を出てから、いつもの道を、二人で話しながら帰る。


雲にオレンジ色の光が反射して、雨上がりの景色を照らす────今日の風景は特別に綺麗だ。


しばらく進んでいくと、リサと私の帰る方向の分かれる交差点までやってきた。


私とリサは、その交差点の歩道の端に自転車を停め、そのままそこに留まって長いこと二人で話し続けていた。


夕陽に照らされた遠くの建物や、交差点の横断歩道を次から次へと通り過ぎる中学生の自転車、赤になったり青になったりを繰り返す信号、道路を行き交う車を眺めながら。


やがて、腕時計の指す時間は7時に近づき、横断歩道を通り過ぎる中学生の数もだいぶ少なくなってきた。


その代わりに、高校生が時々ここを通り過ぎていく。


私はリサとの話を続けながら、なんとなく横断歩道のほうに目をやったその時────


一人の見覚えのある男子高校生が、自転車に乗って、横断歩道を通り過ぎていった。


眼鏡をかけていて、東神高校の制服を着ている────


その人を見た瞬間、全身に電撃のようなものが走った気がした。



「────あっ!!!!」




「何!?志帆、どうしたの!?」とリサが慌てて聞いてくる。


「松本先輩!!松本先輩だよ!!!」

「えっ!?どこに!?」

「さっき、自転車に乗って、ここ通り過ぎていった!」

「えーっ、マジで!?」

「うん!本当だよ!あれは確かに松本先輩だった!」

「そうなの!?じゃあ、志帆、追いかけなよ!話してきなよ!また明日ね!バイバイ!」

「えっ、ちょっ、リサ、追いかけるなんて唐突すぎな…………わかった、追いかけてみる!ごめんね!また明日!」