あの夏の続きを、今



私のいる場所の隣では、トランペットパートの1年生の3人が、メトロノームで遊んでいた。


エリカちゃんが、メトロノームのベルを鳴らしながら、「このチーンって鳴るやつすっごい面白い!」と言っている。


アズサちゃんが「お葬式ごっこはやめなよ〜」と言って笑い、ユイちゃんは「テンポ上げたら絶対面白いよ〜」と言っている。


それを聞いてエリカちゃんがメトロノームのテンポを最高速にすると、物凄い速さでベルの音が鳴り始めた。


3人とも大爆笑している。それを横目で見ていた私まで、思わず笑ってしまいそうになる。


────そうだ。私、指導の時以外、全く後輩と話してない……


────休憩時間とかにも話せるようになれば、もっと仲良くなれるかな……


ふと、そんな考えが頭に浮かんだので、私は思い切って、3人に話しかけてみる。


「メトロノームも間違った使い方をすればこんなに面白くなるんだね!」と言って笑いながら、私は3人のもとに近づく。


それに反応して、3人が笑顔で振り返る。


真っ先に口を開いたのはエリカちゃんだ。


「あっ、志帆先輩!メトロノームのいろんな機能って、面白いですよね!」と言う。


「先輩」と呼ばれることにはまだ慣れてなくて、呼ばれるとなんだか照れくさくなる。


私は超高速で鳴り続けるメトロノームを見ながら、「知ってる?このタイプのメトロノームって、実は重りを外せるんだよね。外したらもっと速くなるよ!」と言う。


アズサちゃんが、「えー!そうなんですかー!ちょっと、外してみてくださいー!」と言ったので、私はそのメトロノームの重りを外して、また音を鳴らし始めた。


「すごいーー!!」
「さっきよりもめっちゃ速いっ!!」
「先輩、こんな面白い技知ってたんですねー!」


笑い転げる3人を見て、私も笑い出した。