あの夏の続きを、今



「休憩ーーっ!」


少し離れたところから、アカリ先輩の声がした。


時計を見ると、もう5時。休憩時間だ。


5時10分から、パート練習。


アカリ先輩が、私とカリンのもとにやって来て言う。


「次のパート練習の時間は、例によって、カリンちゃんは集中レッスンね。それから、志帆ちゃんは、1年生とパート練習しといて」

「「はいっ」」


────いよいよだ。私が初めて、本格的なパート練習の指導をする時がやってくる……


私でもうまくできるだろうか。大丈夫だろうか。


アカリ先輩が去った後、カリンは他の2年生たちと一緒に、少し離れた場所で遊び始めた。


私は、カリン以外の吹奏楽部の同級生と交流することはあまり無く、未だに自分から声をかけたり仲間の輪に入ったりすることは苦手なので、休憩時間も一人でいることが多い。


カリンとは仲良くできるんだけど、私と違ってカリンはみんなに愛される人気者だから、すぐに他の同級生に連れていかれてしまうし。


でも、一人でいるのは好きだから、あまり気にしていないんだけど。


でも、全く寂しくないかと言われれば、そうでもないかもしれない。


私は一人、体育館の扉の前の階段に座って、楽器にオイルを差したりして時間を潰す。


いつの間にか、空からは雨雲が少しずつ去っていき、雲の隙間から太陽の光が差し始めた。


濡れていた地面も少しずつ乾いていっている。