玄関を出た瞬間、蒸し暑い熱気と照りつける直射日光が一気に私たちに降りかかる。


「あっつぅーーーい!!!」


そう口にするリサの横で、私は玄関を出た瞬間に感じた開放感から、飛んだり跳ねたり軽く走ったりスキップしたりしながら、「嬉しいーーーー!めっちゃ嬉しいーーーーー!」と叫びまくっていた。


「志帆、すっごいご機嫌だね!尋常じゃない喜びようだよ!」

「だってー!だってだって!!松本先輩に会えたんだもん!話せたんだもん!!」

「良かったね、志帆!クリスマスコンサートも、行くんでしょ?」

「うん!行くって宣言しちゃったから、行かなきゃね!」


私はこの上ない嬉しさを抱きながら、笑顔で文化会館の建物を後にした。


まだ、あの中には松本先輩がいるはず────そう思って、ほんの少しだけ建物のほうを振り返ってみる。


もちろん先輩の姿はここからは見えなかったが、代わりに透き通るような青い青い青空が、建物の上に果てしなく広がっているのが見えた。


────松本先輩。今日は、先輩に会えて、とっても嬉しかったです。


────また、会いに来ますから。どうか待っていてください。


そう心の中で呟いてから、私はまた前に向き直る。


そして、夏の始まりを告げる景色の中を歩きながら、何度も何度も、今日見た松本先輩の姿、今日聴いた松本先輩の声、そして今日聴いた演奏を思い返していた。