松本先輩の姿は、すぐに見つかった。


さっき一緒に花道を歩いていた数人の先輩たちと一緒に、話をしているようだった。


当然、こちらの姿には気づくはずもない。


これが、中学校で見る松本先輩の最後の姿になってしまうのか…………


そう思いながら、私は窓辺に立ち、松本先輩をじっと見つめる。


「3月9日」がエンドレスで流れ続ける中、私はそっと、心の中で松本先輩に語りかける────もちろん、届くことはないのだけれど。





────松本先輩。


今の私は、先輩にとっての「大切な人」になるには、まだまだ未熟すぎたみたいです。


けれど、私にとっての松本先輩は、ずっとずっと、「大切な人」です。


だから、私は決して先輩のことを忘れません。


今は未熟な私だけど、これから先輩みたいな音を目指して、もっともっと練習を重ねて…


そして、もし先輩が東神高校に受かったら、2年後には私も先輩と同じ東神高校に受かってみせます。


その頃には、きっと私も、先輩に誇れるような素晴らしいトランペッターになっているはずです。


そして、あの時と同じように、先輩とまた一緒に演奏できるはずです。


今の私には、新しい世界へと旅立つ先輩を、こうやって何も言えないまま、ただ見送ることしかできません。


そして、もうすぐ、見ることすらもできなくなってしまいます。


けれど、いつかまた会える日は、必ずやって来ると信じています。


そして、いつか私の本当の想いを伝えられる日が、やって来ると信じています。



だから、松本先輩────



その時まで、待っていてください。



必ず、待っていてください。



どうか、私のことを忘れずに、待っていてください────



私の大切な、松本先輩────