あの時、レナは、私に謝ろうとしていたのだろう。


けれど、私はそれを跳ねのけてしまった。


もう一度やり直そうとしたレナを、私は二度と立ち上がることができないように、言葉のナイフでズタズタに刺してしまった────


そんなレナが再び私に心を許してくれるようなことは、もう決してないだろう。そんな気がする。


体が重苦しい。


私は、レナの何十倍も、何百倍も、何千倍も、ひどい人間だ────


私は、自分がしたことのあまりのひどさに戦慄した。


もしかしたら、私は本当に、レナとは元に戻れないかもしれない。


レナもこんな私を二度と許してはくれないだろう。



私は、レナを失うようなことを、してしまったんだ────



私はその事実の恐ろしさに身震いした。


気がつくと、私の目からは、涙が一筋、零れ落ちていた。


私はそのままゆっくりと歩き出して、自転車を押しながら坂道を上っていく。


いつの間にか、冷たい北風に運ばれて、粉雪が舞い始めていた。


凍りつくような冬の風。


心までも凍りついてしまいそうだ────と一瞬思ったけれど、私の心はもうとっくに、凍りついていたのかもしれなかった。