この時になって────「無意識の感情」はようやく殻を破って、しっかりした実体を持って私の前に現れた。


やっぱり、この感情を押し殺すことはできない────


私は「無意識の感情」と、正面から向かい合った。


私は────もう、認めなきゃいけないんだ。


もう、ずっと前から、そうだったんだ。


私が今までずっと無意識のうちに抱いてきたこの気持ちは、全部、そうだったのだ。


「無意識の感情」の正体。





私は、きっと────






松本先輩のことが、好きなんだ────






先輩の奏でる音に、先輩の優しさに、先輩の笑顔に。


いや、もっとそれ以上に、何気ない毎日を過ごす先輩の姿に、そしてそんな中で私と共にいた先輩に。



私は恋をしていたんだ────






今までは、ハルトの存在がそれを邪魔していたから、気づけなかったし、認められなかった。


けれど、本当は、もう、ずっと前から、好きになっていたんだ。


私はいつの間にか、「先輩」としてだけでなく、一人の異性として、松本先輩に会うこと、話すことを、望んでしまうようになっていたのだ。


「後輩」としてだけでなく、一人の女の子として、私のことを見てもらうことを、望んでしまっていたのだ。


きっと、先輩が引退するずっと前から、そうだったのだ。


溢れ出るその気持ちをぐっと堪えるように、私はレモンジュースをさらに一口二口飲んだ。


きゅうっ、という音が本当に聞こえて来そうなほどに、その甘酸っぱい味と私の中にある想いは、何度も何度も私の心を締め付けた。