交差点で赤信号に引っかかって、私たちは自転車を止める。


「ハルトに彼女かぁ……私たち3人、これからどうなっちゃうんだろうなぁ……」


空を見上げながらそう言うレナの表情は、なんとなく悩んでいるようにも見えたけど、気のせいかもしれない。


信号が青に変わって、私たちはまた進み出す。


「でもさ、私たちこれからまだ、人生長いじゃん!ここで悪いことあったってことは、次はいいことあるんじゃないの?」


明るい性格のレナらしい言葉だ。


「そう……かな?」

「うんうん!きっとそうだよ!いつまでも悲しいこと引きずってたって、余計悲しくなるだけだし!

いつかいいことあるはずって、信じよう?そしたらきっと、元気出るよ!」


明るい表情でレナがそう言うのを見ていると、私もほんの少し、悲しみが和らいだ気がした。


「そうだね………ありがとう。昔から、レナのポジティブさには敵わないよ」


私がそう言うと、レナはにっと笑って、私に向かってピースサインをしてみせた。



────確かに、長い人生の中で、一度や二度の失恋ぐらいは、あって当たり前のことなんだろう。


いつまでも悲しんでたら、次のチャンスを逃してしまうかもしれない────


それは分かってるけど、でも、改めて、「もうハルトへの恋はもう決して実ることはない」という事実を頭の中で再確認して飲み込むと、やっぱりなんだか悲しくなってくる。


レナと帰る方向が分かれて、一人になってから、私は道を曲がる前に自転車を止める。


遠い空に広がる、穏やかな夕焼け。


込み上げてくる涙をぐっと堪えて、私は再び自転車に乗り、坂道を上り始める。